①情報提供:佐田 亜衣子
②情報時期:2011
③留学先 :アメリカ・ニューヨーク
④家族構成:共働き、配偶者および子供と同居
⑤課題分類:家族全体の課題、夫婦の課題、研究者の課題
⑥解決策 :自分自身の決断と夫婦での話し合い
⑦リンク :
⑧エピソード:
若手研究者にとって、ライフイベントと研究の両立は、思い悩むことの一つではないでしょうか。ポスドクで海外にいきたい、でも家族は?いつか子供を持ちたい、でもそれはいつ?自分と家族が希望するタイミングと場所で、ポジションを得ることはできるの?私も、研究者と家族がともに幸せな人生選択をするためにどうしたらいいのか、悩みながら決断してきたので、少しだけ体験を共有したいと思い筆をとりました。
博士課程の最後の年、アカデミアで研究者としてやっていきたい、海外でポスドクをしたいという気持ちは、自分の中では固まっていましたが、難しいのは結婚・出産のタイミング・・・。博士学生の頃、私には大学の学部時代から遠距離交際を続けていた彼氏(今の夫)がおり、当時は東京で企業勤めのプログラマーでした。二人が出した結論は、留学前に入籍し、夫は仕事を続け、私は単身で渡米する、というものでした。夫いわく、「2-3年で帰国するならば、東京で社会人を続けて、経済的・社会的に安定していた方が良いだろう」と。国をまたいだ別居婚ということで、周囲にはかなり反対されましたが。
しかし、なかなか思い通りにいかないのが研究です。パッとした成果も出ないまま、約束の2-3年はあっという間に過ぎました。あと少し時間があれば・・・そう考えた私は、願う気持ちでフェローシップに応募し、無事採択され、J1ビザでカバーされる5年間はポスドクとして滞在できる切符を得ました。こうしてポスドクとしての首はつながったのですが、次は家族のことです。日米での別居婚を5年間、交際時から考えると10年間の遠距離、帰国後も東京近くで職を得られる保証はない、子供が欲しいが年齢は・・・と、いろんな要素を考え、夫に会社を辞めてもらい、アメリカで一緒に暮らすことに決めました。
その後、アメリカで妊娠・出産。夫は現在、個人事業主として在宅でプログラマーをしながら、家事・育児を一手に引き受けてくれています。場所で悩まずにポスドク後のポジションを探せたこと、独立できるチャンスが目の前にやってきたときに、関東から九州へ、家族とともに引っ越すことを躊躇なく決断できたのも、夫が在宅ワーカーであるおかげだと今改めて思います。私たち夫婦は、いわゆる「安定した」「普通の」日本の家族の形ではなく、人と違う選択をすることに、まだまだ心無い批判や偏見は尽きないですが、家族とお互いの仕事にとっての優先順位を考えたときに、これがベストであったと思っています。
仕事を探す際に場所的な制約があることは、研究者だけでなく、多くの共働き夫婦が直面する共通の課題です。アメリカで出会った友人の中にも、同じような境遇で悩む人は多くいました。単身赴任の精神的・金銭的負担や、家庭の事情でキャリアパスを変えざるを得ない問題、特に日本では女性側が我慢するケースが多いことなど、研究者と家族がともに幸せな人生選択をするという視点からもっと議論が広がればいいと切に思います。
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